2000年9月
1.
一般概要
(1) 地理
中国の西南地区は南北に大きな山脈が貫いており、その間に大河が挟まれ、緯度と高度によって様々な独自の環境を持つ。雲南省は中国の西南端に位置し、南北は北緯21°08′より29°15′まで約990km、東西は東経97°81′より106°12′で約864.9kmに及ぶ。
面積は日本とほぼ同じ、394,000kuで、中国第八番目の大きさの省である。
国境線は、ミャンマ−と約2,000km、ラオスと約750km、ベトナムと約1,300km接しており、計4,061kmである。この国境線の長さは新彊、内モンゴルに続いて3番目の長さである。又北部を四川省、西蔵チベット自治区、東部を貴州省、広西壮族自治区と接している。
雲南省にはチベット高原から続く、高い山々が有り、山地、高原の面積が94%を占平地は少なく、交通は困難である。約30の山は2,500m以上の高度があり、最高峰は梅里雪山の6,740mである。
概ね北西部が峡谷地帯、南東部が高原地帯である。 また6つの大きな水系、すなわちメコン川の上流の瀾滄江、揚子江の上流の金沙江、サルウイン川の上流の怒江、イラワジ川の源流の独龍江、ベトナムのトンキン湾に注ぐ紅河、珠江の上流の南盤江があり、水源豊富である。
湖水の数も中国西南部では最大の40以上あり、主なものは昆明湖(Dian Chi),ER HAI,撫仙湖である。
(2) 気候
モンス−ンの影響と高度の差が激しい複雑な地形により、雲南の気候は非常に変化のある亜熱帯高原季節風気候である。
一般的には昼夜の気温差があるが、年中穏やかな気温で、平均気温は16.1℃である。雨期は5月より10月で、年平均降水量は1,100mmである。
南部は気温、湿度が高く、熱帯気候、高原は四季を通じて春の陽気、北西及び東北の山岳地域は比較的に寒冷である。 熱帯地域に属する地方は10万kuで、全国の熱帯地域の1/5を占め、生物の種類も豊富である。
(3) 人口
人口は1999年で4,192.4万人。 人口密度は106.37人/kuである。
これは中国の平均123人/kuに比して少ないが、平地面積が6%しかないという状況を考慮すると、決して余裕があるとはいえない。
少数民族の人口は省全体の人口の約三分の一であるが、民族自治地区には少数民族の人口が二分の一以上占めるところもある。中国の28省、自治区の中での少数民族の人口絶対数は広西壮族自治区の少数民族人口約1,700万についで2番目に多い。
主なものはイ族:439万、白族:145万、哈尼族133万、壮族:109万、タイ族:111万などで、人口が4,000人以上ある民族の数は26である。
少数民族の多くは仏教及びアニミズムを信仰し、それぞれ民族言語を持ち、漢族の生活様式と異にするが、漢族との婚姻もかなりみられ、漢族との対立は特に問題となっていない。しかしながら、高地の自然条件の厳しい地域で居住する少数民族の多くは貧困状況に有り、それより脱する事は容易ではない。
6地区(昭通、玉渓、思茅、保山、麗江、臨滄)
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8自治州(楚雄、紅河、文山、西双版納、大理、徳宏、怒江、迪慶)
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3省轄市(昆明、東川、曲靖)
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2.インフラ整備状況
(1) 鉄道:成昆線(成都−昆明)、貴昆線(貴陽−昆明)
と南昆線(南寧−昆明)3本の幹線鉄道により省外とつながり、運輸能力は1,000万トン強、99年の貨物運送量は152億トンkmに達した。
昆明よりベトナムのハノイ迄1910年に開通した鉄道も運行中。
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(2) 道路: 全省道路の全長は約10.2万km、99年の貨物取扱量は288億トンkm。 雲南省初の高速道路である全長130kmの昆明−曲高速道路が96年10月開通した他、昆明−玉溪高速道路も99年4月開通、昆明市を中心とする200km圈内の高級道路網が基本的に形成されている。 またベトナム、ラオス、ミャンマーへつながる高級道路も建設中。
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(3) 空路:昆明国際空港をはじめとする9ヶ所の飛行場がある(昆明、西双版納、大理、麗江、中甸、保山、芒市、思茅、昭通)。 昆明空港からは海外及び国内71路線飛んでいて、海外へは香港、バンコク、ヤンゴン、シンガポール、チェンマイ、ビエンチャン、クアラルンプール及び大阪(関空)に定期便がある。 昆明−大阪便は99年3月就航(日本エアシステム)。
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(4)
水路:雲南省の西北を源流とするメコン河水路整備の計画があり,将来ビエンチャンまで500トン級の船を運行させる計画がある。 タイのチェンライ迄の観光船が運行中。
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3.雲南省のメリット
(1) 地理
@ 国境線:
雲南省はミャンマー、ラオス、ベトナム3ヶ国と隣接し、国境線の長さは4,061kmあり、タイにも僅か200kmの距離なので、中国の対外往来の重要なルートとなっている。
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A 辺境貿易:
辺境貿易は、中国で行なわれている中央政府の干渉なしに地方政府が許認可を持つ貿易を指す。この辺境貿易は、中国が開放政策を採用したことにより、隣国との貿易を行ないうる状況が生じ活発化したが、従来も非公式には行なわれていた。形態的には、地方政府に認可された辺境貿易会社により行なわれる貿易と、辺境地域の住民個人の国境を通した商業活動の二つに分けられる。辺境貿易と密貿易の違いは地方政府の承認の有無であり、通常貿易と辺境貿易の差は、中央政府の認可か地方政府の認可かの違い、国際通貨の使用の有無及び貿易実施者の所在地如何である。
雲南省は、ミャンマ−、ラオス、ベトナムと国境を接しており、従来から国境を通した交流が活発であったが、文化大革命により交流は一時期停滞していた。しかし、開放政策採用後は交流も再び盛んになり、一気に辺境貿易が活発化した。雲南省の辺境貿易はバ−タ−取り引きが中心であるが、金額で把握できた輸出入の額は、1993年迄急増したが、翌1994年より減少傾向となった。然し、1998年より増加傾向に転じている。 品目としては、雲南省は繊維製品や自転車などの日常工業品及び肥料等を輸出し、農林産品や宝石、金属鉱物、原材料、木材等を輸入していたが、近年はミャンマ−経由でタイの工業製品を輸入するケ−スも増えている。
雲南省では、昆明市、瑞麗市、Wanding市、思茅市、景洪市、Menghai県,Mengla県、金平県(金水河)、河口県、麻栗坡県(天保)のより一層の開放が国務院により決定され、沿海開放都市と同様の政策を採ることができるようになった。 開放政策は、具体的には沿海開放都市の政策の他に、各地方毎での保税区の設置、資源開放開発区の設置が含まれる。
辺境貿易は、地域住民の所得増加、地方政府の歳入増加等の経済効果が大きく、地方振興に大きな役割を果たしている。しかし、沿海部との格差を縮小するには至っておらず、一層のインセンテイブの賦与、事務効率の向上などの施策が望まれる。
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(2) 自然資源
@鉱物資源:雲南省は「有色金属の王国」とよばれ、現在迄に154種類の非鉄金属が発見されている。埋蔵量で見ると、鉛、亜鉛、ゲルマニウム、カドミウム、タリウム、珪藻土が中国第1位、錫、マンガン、
ニッケル、ストロンチウム、インジウム、燐、砒素、白金属、カリウムが中国第2位、銅、コバルト、蛇紋岩
(化学肥料用)が中国第3位となっている。然しながら、これらの資源開発は立ち遅れている。 |
A植物・動物資源:雲南省の森林面積は約1,000万ヘクタールあり、動植物の原種が多く存在している。木材(松、杉、南洋材)、コーヒー豆、茶、煙草、ゴム、サトウキビ等の経済植物や漢方薬などの生産も豊富。また、野生動物が多く、脊椎動物だけでも1,600余種確認されている。
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B水力資源:金沙江、怒江、瀾滄江、珠江、紅河等の水力資源は1億KW強あり、
全国第二位を占める。 現在重点プロジェクトとして瀾滄江に合計8ヶ所の大型雛段式発電所を建設する計画があり、全て完成すれば発電設備総容量は1,200万KWとなる予定。このうち125万KWの漫湾発電所が完成しており、大朝山発電所が工事中となっている。これらの発電所完成後は省外への給電も可能となる見込み。
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C 観光資源:雲南省には様々な自然景観と文化的特色があり、独特の観光資源に恵まれている。昆明(西山、民族村、金殿等)、石林、大理、麗江、中甸(シャングリラ)
など50ヶ所以上の観光地がある。
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(3) 有力業種
煙草、製糖、茶を主とする食品工業、鉄、非鉄金属を主とする冶金工業,燐肥料・飼料工業を主とする化学工業及び観光産業。
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(4) 技術力と労働力資源
全省で大学は24校、在学生数は約7.4万人、中等専門学校は136校、在学生数は約11.95万人。
給与水準は昆明経済技術開発区の場合、年収で高級管理職2〜3万元、技術者1.5〜2万元、一般労働者は0.6〜1万元。
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4.重点誘致産業
・道路、橋梁、電力、鉄路、埠頭等のインフラ施設
・鉱物資源のリスク探査と総合開発及び重要な原材料の生産
・非鉄金属、燐鉱石などの鉱物資源、香料・ゴム・果物などの生物資源の加工
・国有企業の技術改造
・農業、牧畜業、水産養殖業
・人々の生活と社会経済に有益なサービス業
・輸出型、外貨獲得プロジェクト
・ハイテクと新技術産業
・旅行総合開発プロジェクト
・旧市街改造、不動産プロジェクト
5.雲南省の主要経済統計
( )内は前年比
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97年
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98年
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99年
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全国(99年)
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国内総生産(億元)
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1,626
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1,793
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1,855
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82,054
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工業総生産(億元)
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1,291
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1,440
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1,561
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N.A.
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軽工業(億元)
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696
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751
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793
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N.A.
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重工業(億元)
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596
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689
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767
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N.A.
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輸出(億ドル)
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12.14
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12.63
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10.34
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1,838(0.5%)
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輸入(億ドル)
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7.97
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7.71
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6.25
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1,402(△1.5%)
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6.雲南省外資系企業進出状況
(1)概況
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94年
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95年
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96年
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97年
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98年
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99年
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三資企業批准件数(件)
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262
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277
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159
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135
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122
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140
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契約外資金額
(億ドル) |
2.84
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7.02
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4.26
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3.24
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3.49
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5.78
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実際利用金額
(億ドル) |
3.14
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3.44
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3.38
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3.13
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2.97
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2.37
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7.省都昆明市
(1)概要
位置:雲貴高原の中部(東経は102゜10´−103゜40´、北緯は24゜23´−26゜22´)に位置する。市中心部の海抜は1,891m。
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面積:総面積は15,561ku。うち市区部面積125ku。
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人口:99年末の総人口は473.4万人、うち都市人口は319.0万人、農業人口は154.4万人。少数民族が33.8%を占める。
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気候:年平均気温は15.1℃、7月は19.7℃、1月は7.5℃。
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行政区:4区(五華区、盤龍区、官渡区、西山区),
1市(安寧市), 7県(呈貢県、晉寧県、富民県、
宜良県、嵩明県、石林彝族自治県、禄勧彝族苗族自治県)
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姉妹都市:藤沢市 中国国歌を作曲した聶耳が湘南海岸で水死。尚、作詞は田漢。
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(2)資源・工業
鉱物資源は燐、非鉄金属、鉄、石炭、石英砂、アルミ鉱等。
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工業は機械、煙草、冶金、化学工業、紡織、食品、建材等。
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(3)インフラ整備状況
鉄道:昆明−貴陽、昆明−成都、昆明−河口、昆明−南寧の4本の幹線鉄道の他、幾つかの省内鉄道がある。また、昆明−楚雄・大理の鉄道も開通した。
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道路:昆明−景洪・瑞麗・曲・水富・富寧・河口の6本の幹線道路が放射状に省内各地へ延びている。また4本の国道が昆明を通っている。昆明−曲靖、昆明−玉溪の高速道路も開通した。
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空路:昆明空港からは国内線は71路線あり、国際線は香港・大阪・バンコク・シンガポール・ヤンゴン・
チェンマイ・ビエンチャン・クアラルンプ−ル間で定期便が飛んでいる。 |
(4)銀行事情
昆明市には、4大国有商業銀行(工商銀行、中国銀行、建設銀行、農業銀行)の他、交通銀行、広東発展銀行
、光大銀行 、華厦銀行、昆明市商業銀行が支店を開設している。外銀では、タイのKRUNG THAI BANK(泰京銀行)が支店を、THAI ARMERS
BANK(泰華農民銀行)、BANK O AYUDHYA(大城銀行)が駐在員事務所を開設している。
(5)産業政策
<1>奨励業種:
・農業新技術、農業総合開発、エネルギー、交通、重要な素材
・ハイテク産業、エネルギーや原材料節約型産業、国内生産が需要を満たさ
ない新設備、新素材
・輸出型企業
・資源の総合的利用及び環境汚染に有益な新設備と新技術
・中国中西部地区の人力資源と自然資源を充分発揮し、国の産業政策に沿う
プロジェクト
・国の法律や規定が奨励するその他のプロジェクト
<2>制限業種
・国内で開発また導入され,生産が国内需要を満たしているプロジェクト
・貴重鉱産物の探査と採掘
・国のマクロ計画に係る業種
・国の法律や規定の制限するその他のプロジェクト
<3>禁止業種
・国の安全や社会公衆の利益を害する業種
・環境汚染の著しい業種
・耕地の使用量の多い、また軍事施設にとって危険なプロジェクト
・中国特有の技術を利用するプロジェクト
・国の法律や規定により禁止されるその他のプロジェクト
雲南省:
情報局:http://searchina.ne.jp/area_guide/seek.cgi?genre=yn
雲南旅行:http://jp.yunnantourism.com/
地図:http://www.jcbus.co.jp/chinahotel/map/yunnan/
旅行社:http://www.cnta.or.jp/ino/agency/yunnan.html
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